夫の場合

　一人一人が限りなくユニ－クな存在に形成されていく、その原点とも言うべき境遇　環境に
私は物凄く興味があります。

誰がいったいこんな風に人をある方向に引っ張っていくのか----

わが夫の場合を考えてみると----

夫は現在74歳！
生まれは九州大分県。　父親は八幡製鉄の技師でありましたが、彼が6歳の時に
突如機械の下敷きになってあっけなく他界。
母親は一人息子の彼を連れて、実家を出　それからがいよいよ彼の貧乏物語が始まるのです。

小さな家を借りて二人の生活が始まった。
母親は朝4時ごろから起きて仕立物の針仕事。　

6歳の彼が6時に起きて先ず一番にやることは、米びつを見る！

お米が入っていればホッと胸を
撫で下ろし、お米が入っていないと、今日は何をして近所の手伝いをし家計を助けようかと
考えることから始まり
わずかなお米と野菜で雑炊を作り、母親に食べさせ自分が食べ、学校に行く。
6歳の頃から常に働き、近所でも評判の孝行息子だったらしいのですが、やはり貧しさ故に
凄まじい　いじめ　もあったようです。

それでも尚苦しい生活だつたらしく、母親は彼を子供の居ない友人に預けて大阪に働きに出かけた
のですが、これが又　悲劇のはじまり！

その友人夫妻は彼を本当の子供のように可愛がり、片時も離さないほど可愛がるものですから
彼の心もすっかりその友人に傾いてしまつたようなのです。
彼の母親は時々大阪から帰ってきて、逢いにくるのですが、子供は実の母親より
その友人夫妻の方に心がうつってしまい、実母になつかない。

これではイカンと母親は彼を今度は自分の兄の所に預けたのが、これまた悲劇！
今度は、子守　薪割り　水汲み　等々奴隷のように働かされろくに勉強も出来なかったようです。

これからの彼のスリルに満ちた冒険物語のこれが、ほんの前編！！

　　負けるもんか！！
　　

これが夫の今に至る　口癖！